直木賞と芥川賞の2つの違いとは?
2021/07/14
テレビなどで目にする、直木賞と芥川賞の受賞式。華やかなスポットライトを浴びて、
誇らしげに会見する場面は、この賞を目指した苦悩やそれを乗り越えた達成感など、作家の晴れやかな表情がブラウン管に鮮やかに映し出されますね。
この文学の登竜門といえる賞は皆さんもご存じだとは思いますが、
では、この2つの
賞の違いについて説明できる人はどれだけいるのでしょうか。
今回はこの2つの賞の違いについて説明をしていきたいと思います。
まずは、定義として作者のキャリアの違いについて
芥川賞は新人が対象で、直木賞は無名および新人から中堅クラスまでが対象になります。
直木賞の方が幅広いキャリアの人が対象なのですね。
ですが、最近は定義づけがあいまいになっているようです。
近年の芥川賞は新人とは言えない作家が受賞していることもありますし、一方、直木賞の選考では、名作家が選ばれることが多いので、新人が直木賞をとることは難しくなっているようです。
結論としては、定義付けとしてあるだけで、「この作者はこちらの賞しか該当しない」、
という棲み分けはないように見受けられます。
ということなので、これだけでは賞の違いの説明ができないですよね。
次は、作品のジャンルの違いについて
芥川賞は純文学が対象で、直木賞は大衆小説が対象とのこと。
なんとなく分かったような気にはなりますが、
では、純文学と大衆小説の違いは何なのでしょうか。
次にその違いについて説明していきたいと思います。
純文学を百科事典で調べてみると、「読者の娯楽的興味に媚びるのではなく、作者の純粋な芸術意識によって書かれた文学」という意味。
さらに「自分の美的感覚に重点を置いて、純粋な芸術性を目的とする文学」と続いています。
一方、大衆小説は「一般大衆を対象にして書かれた通俗的、娯楽的な小説」という意味。
さらに、「大衆の興味を主眼として、その娯楽的要求にこたえて書かれた文学」となっています。大衆小説を例えていうなら、家庭小説、推理小説、ユーモア小説とのことです。
どうでしょうか。お分かりになりましたでしょうか?
第153回芥川龍之介賞 「火花」 (又吉直樹 著/文藝春秋)
芥川賞受賞作 スクラップ・アンド・ビルド (文春文庫) 羽田圭介
第163回 直木賞受賞作 少年と犬
まとめ
作者というのは何で文章を書くかというと、言うまでもなく、それを人に読んでもらい、自分を認めてもらいたいからです。
2つの賞の違いは、その認めてもらう方法論が違うということになります。
ひとつは自分の内面を深く掘り下げ、その深層をさらけ出すことにより、その高尚な文章によって人に認めてもらうということです。純文学のことです。
もうひとつのほうは、読み手が納得できる、身近に感じられる、娯楽として楽しめる、ということで、つまり、自分というより、読者の心理に意識を働きかけて、文章として表現していくということになります。大衆小説のことです。
もちろん、完全に分断されるという訳ではなく、純文学作品にも大衆小説の要素が、大衆小説作品にも純文学の要素が含まれると思いますが、
何を主として文章で表現していくかに大きな違いがあるようです。
以上、芥川賞=純文学 直木賞=大衆小説
それを意識して読んでみると、さらに理解が深まるかも知れませんね。